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2019年9月21日土曜日

顔の差


ブログ更新は怠慢そのものなのだが、書きかけの記事は案外たくさんあったりする。見直してみると、大概は途中でやめただけあって、どうでもいい記事なのだが、これはちょっと「おおっ?」と思った。
それはウグイ属の顔の記事。
日本産ウグイ属は5種。どれも体は似てるのに、顔の形が違うのが面白い。中でも極端なのはウケクチウグイとエゾウグイ。ウケクチは名の通り下顎が出た受け口。エゾウグイは吻端が突き出た形。残りの3種(ウグイ、ジュウサンウグイ、マルタ)はどちらかというとエゾウグイ寄りというくらいの形だ。
エゾウグイは産卵の時にメスが頭から川底に突入するようなので、この吻端はそのためだろう。ウグイ、マルタは見る限り川底には突っ込まない印象。ただし、四万十川ではウグイの吻端がずいぶんとがるみたいなので、場所によって産卵行動は違うのかもしれない。
さて、ウケクチはどうだろうか。いつか見られるかな…

ウケクチウグイ(Tribolodon nakamurai)

エゾウグイ(Tribolodon ezoe)


エゾウグイの産卵

ウグイの産卵

2014年4月29日火曜日

産卵行動体験記 ウグイ 7:繁殖の収斂進化?

ウグイ(Tribolodon hakonensis)の放卵放精の画像、映像を確認していると、改めて思ったことがあります。


雌雄ともに産卵期になると赤黒くなって、体中に追星が出てサメ肌になる。それでもって、雨後に大集団で瀬に集まって産卵する。
なんだか同じような特徴を持つ魚がいるような・・・そう、アユです。アユの産卵時にとても似ているように思えるのです。
アユも産卵期には雌雄問わず赤黒い婚姻色を呈し、体表が硬化し、さらには雨後に大集団で同じようにぐしゃぐしゃと産卵します。特にこの写真の真ん中のたち上がっている個体なんて産卵時のアユそっくりのフォルムに見えました。

アユとウグイは分類的にはかなり遠い位置関係にあります(あくまでも魚の中での話ですが)が、産卵時には同じような瀬の小礫環境を好むという点で共通しています。
2種の産卵行動を見る限り、こうした環境で産卵する魚はなるべくして赤黒の婚姻色や体表面の硬化、大集団の産卵といった特徴を持つようになったように見えます。
いってみれば、繁殖の収斂進化(※)とでもいうべきでしょうか。

どうして彼らがこのような特徴を持つようになったのか、この謎を直接解く方法はちょっとわかりません。しかし、繁殖行動を観察することでヒントを掴めそうな魚種には心当たりがあります。
それはエゾウグイです。
エゾウグイはウグイと近縁で、形態も酷似しており、繁殖期以外は種を判別することすら困難です。
ところが、繁殖期になると一目瞭然。
ウグイが派手な赤黒の婚姻色を呈するのに対して、エゾウグイはほとんど婚姻色が出ません。きっと彼らには婚姻色を出さなくてよい理由があるはずです。
裏を返せば、産卵環境、行動の差を見ればウグイが赤い理由も少しは見えてきそうです。

そんなわけで、今、エゾウグイの産卵が見たくて仕方がありません。
本州で見ようと思うとかなり場所探しが大変だしなぁ、、、見るならやっぱりどこにでも生息している北海道だろうなぁ。。。
しかし、産卵は雨次第なので、ちょっと行って見られるような種でもなく、打つ手がない。
一年くらい北海道転勤にならないかなぁ…なんて思ってみる今日この頃でした。

※収斂進化:複数の異なるグループの生物が、同様の生態的地位についたときに、系統に関わらず身体的特徴が似通った姿に進化する現象(例:鳥とコウモリ)。

産卵行動体験記 ウグイ 6:流れゆく卵

流れ出ていく放卵放精後のウグイ(Tribolodon hakonensis)の卵。


動画を見ていてもわかるのですが、産卵後の卵はかなりの量、下流へと流れ出てしまいます。
流れてしまった卵の行く末は、普通に考えると正常な発生にはつながりそうにもありません。きっとほかの魚の餌になってしまうでしょう。
ひょっとすると、卵食個体に食べられてしまう卵の量は、こうして流れてしまう卵の量に比べるとずいぶん少ないのかもしれません。
肉を切らせて骨を・・・ではないですが、多少の卵が食べられても、それで礫への産着率が上がるならむしろ卵食歓迎、ウグイはそんな戦略をとっている魚に思えます。

雌雄問わず発する赤色の婚姻色は、卵食個体をも含めた大産卵集団を作るためのものなのではないでしょうか?
また、同じく雌雄を問わず体の前半に出る追星は、産卵群に頭を突っ込んで卵食いをするための形質で、これによって自分を含めた集団の適応度が上昇するために発達してきた形質ではないでしょうか?

2014年4月28日月曜日

産卵行動体験記 ウグイ 5:放卵・放精と卵食個体の役割

ウグイの放卵放精はマルタと同じように、3~5個体程度の集団で行われていました。
しかし、放卵放精をしている集団のほかに、後ろに頭から突き刺さってくる個体がたくさんいました。こうした個体はマルタではあまり見られません。

最初に見た激しい水しぶきの正体は、水上にでた彼らの尾が生み出したしぶきだったのです。

頭を集団の中に突っ込んでいる様子から見て、彼らはおそらく卵食個体だと思われます。
放卵放精に参加する個体ならば頭より排泄口を集団に近づけるでしょう。


さて、卵食という放卵放精した集団にとっては迷惑に見えるこの行動。
逆説的なのですが、動画、写真を見ているうちに、どうも彼らの存在は産卵集団にとって必要な存在に思えてきました。


第一に、産卵集団は彼らを追い払うような行動を全くとりません。
卵食がとても迷惑な存在ならば産卵集団にも、もう少し何か対抗策が発達していてもよさそうです。


第二に、卵食個体が突入したときに河床の砂利が突き崩され、それが産卵群の卵が砂利に付着する上で重要な役目を果たしているように見えるのです。動画で見ると、「ジャッジャッ!」という砂利をあさる音がします。
マルタの場合、放卵放精時に産卵集団全個体が水面に顔を出して立ち上がるような行動をとり、この時に尾びれで川底をおこしているように見えます。
ウグイの場合は、マルタよりも体サイズが小さいため自力で川底を掘り起こす力が弱く、卵食個体の力を借りて礫の攪拌を行っているのではないかと思われます。

2014年4月13日日曜日

産卵行動体験記 ウグイ 4:深夜のお楽しみ

家に帰ると、予想通りかなり冷たい視線を浴びました。
しかし、実家効果とでもいうべきでしょうか。
思っていたよりも責め苦は厳しくありませんでした。子供のころ、やましいことがある時に友達と一緒に家に帰ると怒られにくかった。それと似たような感覚を覚えました。
なんとかやり過ごした私は、家族の寝静まった夜、自室でそっとパソコンを立ち上げたのでした。

フィールドでのドキドキ感はもちろん最高なのですが、フィールドでよいことがあった後の画像確認もたまらない時間です。
もっとも、ドキドキがガッカリになることもかなりありますが。


ウグイの産卵群とマルタの産卵群は隣接していたけれど、瀬の落ち込みが境界線になって、互いにきれいに分かれていた。
浅い瀬の主流部にいるのがマルタで、瀬脇の落ち込みの中にいるのがウグイだ。

群れの動きも違う。
マルタはみな、流れの中で頭を上に向けて定位しているのに対して。
これに対してウグイはというと、極めて不規則流。定位している時間は短く、横に前後にと激しく動きます。

ウグイの産卵群
マルタの産卵群

さて、個人的に一番気になるのが放卵放精の瞬間。
実はウグイの動画には産卵行動(放卵放精)の瞬間が写っています(何回かしているのですが25秒付近がわかりやすいかも)。しかし、この時間が実に短く、そしてわかりにくい。
マルタの場合、その瞬間がはっきりとわかるのですが(参考)、ウグイの場合は群れが動いている一連の流れの中で行われているようです。
また、放卵放精が行われる頻度が高いのも大きな違いといえそうです。

しかし、放卵放精時の動きを観察しようにも動きが早すぎたり、個体が重なったりしてよくわかりません。この辺りは幸運にも、カメラで撮影したスチル画像に放卵放精と思しき瞬間が何枚か捉えられていました。

2014年4月12日土曜日

産卵行動体験記 ウグイ 3:撤収

ウグイとマルタの産卵群の混群は、文献で読んだことはあったけれど、自分の目で見るのは初めてでした。それどころか、ウグイの産卵に撮影可能な体勢で遭遇したこともありませんでした。



ウグイ自体はどこにでもいる魚だし、人工産卵床を使った漁が行われているくらいだから産卵場もよく知られている。しかし、自然状態の産卵に会おうと思うとなかなか大変です。

基本的には春の雨後翌日に産卵するのですが、雨後でも産卵したりしなかったり、ある場所ではしなくても別の場所ではしていたり。家の前に川があるなら良いけれど、市街地に住む普通のサラリーマンが出掛けていって出会うのはなかなかにむつかしい。
かなりの部分、運だよりです。
かくいう私も、ここ数年探し歩いていたのですが、産卵していると言い切れる群れには遭遇できませんでした。

まさかこんな形で出会うとは…そう思いながら、動画と写真の撮影に没頭しました。

撮影することしばし、なにやら雲行きがかなり怪しくなってきました。天気予報で言っていた通り、雷雨が来そうだ。
ウグイに集中するあまり、マルタの撮影はあまりできなかったけれども、ここは安全第一。急いで撤収することにしました。

ちなみに、この時点で13時。帰る約束の時間を大幅オーバーしていました。
いつもこうして自分の家庭内での立場を危うくしているのだろうなぁ。

「こんなチャンスは二度とはいんだ!」
という主張は誰にも届かないのが痛いところです。
家に帰っていかに謝るか・・・そんなことを考えながら引きあげました。

産卵行動体験記 ウグイ 2:マルタだけじゃない!?

二時間ほど時間をつぶした後、ふたたび同じ瀬に戻りました。
すると、幸運なことに、釣り人達はいません。
午後から天候が崩れる予報だったので、そのせいかもしれません。

 
瀬をみれば、なおひっきりなしの水しぶき。止んでいる気配はありません。
ここ数年、春のマルタ釣りがブームとなっている多摩川で、こんなチャンスはまたとない。

「誰も来てくれるなよ!」

そう思いながら河原を走りました。

ヒップウェーダーで川を横断したため、股間部が激しく濡れていきますが、そんなことはまったく気になりません。
転がり込むように現場に向かいました。

「やった!」
周囲には誰もいない。

そっと水しぶきの上がる瀬近づいてみる。
・・・・・近くで見てもしぶきは止みません。
はやる気持ちを抑えきれず、瀬に立ち入り、早速カメラを向けました。

が・・・なんと、こんな大チャンスを前にカメラのシャッターがおかしいではないですか。
ハウジングをつけたままでは、全くシャッターが切れない。
イラついて瀬の中で立ち上がると、目の前で群れていたマルタ達が下流へ散っていきました。

さて、シャッターの不調ですから、カメラをハウジングから取り出して確認しなければなりません。
陸に移動するために、私は川の流心に向いていた体を反転させ、岸向きにしました。
すると、足元からは、また別の群れが散っていきました。

ハテ…?

散っていく魚たちだが、なにやらマルタより少し小さく、赤金色に見える。
「ひょっとして・・・ウグイ!?」
シャッター不良のカメラを手にしながら当惑することしばし、シャッターが切れぬならば…と、動画のスイッチをオン。そのまま川にぶちこみました。

別のカメラを取りにいったん車にもどり、帰ってきてカメラを川から回収。
動画を再生してみると、はたして記録されていたのは、赤黒金に色づいたウグイの産卵群でした。

2014年4月10日木曜日

産卵行動体験記 ウグイ 1:瀬に上がる飛沫

"ウグイ類の産卵を見るために必要な行動は二つ、一つは春に雨後翌日の川に出かけること、そしてもう一つは川についたら瀬をじっと眺めること。
瀬に水しぶきが立っていたらしめたものだ。きっとそこにはウグイの仲間が産卵している。
しかし、遭遇するのに一番必要な要素は運だと思う。"

 

年度の変わり目は年間でもっとも仕事が落ち着く期間だ。
子供たちも春休みということもあって、家庭内の行事が盛んになる。
しかし、私にとっては、同時に魚達が産卵に動き出す頃でもあることが悩ましい。

先週末は、実家に帰省していたのですが、川の様子が気になってしょうがない。
そんなわけで帰省中にもかかわらず、日曜日、午前中に帰ることを家族と約束して、近所をながれる多摩川へと向かいました。
お目当ては、マルタの産卵です。

川について下流方向へ歩くこと数分。
2つ目の蛇行部にあったチャラ瀬で、水しぶきが上がるのを見つけました。
かなり激しく、間断なく上がっている。
これまで見てきたマルタの産卵では、こんな状況は遭遇したことがありませんでした。

しぶきが一度上がると、数個体が水面から顔を出す。
しばらくして、別の場所で同じことが起きる・・・というのが産卵時のマルタの一般的な行動です。

今日のはよほどに大きなピークなんだなぁ・・・。そう思っていました。

この瀬にはすでに数人の釣り人がはいっていて、後から来た私が中に入ってカメラを構えるのはちょっと難しい感じでした。
そのため、とりあえず遠目から数枚、瀬の状況を撮影して、別の場所を探すことにしました。 

2014年4月6日日曜日

春のフィーバー

昨日から今日まで自分の実家に帰省。
昨日はじっとしていたが、今日は午前中川へと繰り出した。
で、成果はというと、コイとフナとウグイとマルタ、実に4種の淡水魚の産卵に出くわした。
こんな大当たりは初めてだ。

このところ、ジュズカケハゼ探索で外れ続けているので、なんというか外れ癖のようなものがついていた。だもんで、この大当たりぶりにはえらく動揺してしまった。
車に機材をとりに帰ってもどったら、さらに忘れ物に気づいて再び・・・という動きを繰り返すこと数回。決して近くはない距離の河原を歩き回っていたので、すっかり足がだるい。
今日の観察では、ウグイとマルタの産卵場と産卵行動の微妙だけれども結構明確な差異や、フナの産卵などに関して新発見が多かったのだが、それはまたおいおい個別に記すことにした。
忘れないようにしないとなぁ。

ウグイとマルタ
コイ
フナ(ギンブナ?)

2013年6月3日月曜日

春シリーズのふりかえり ウグイ


なんだかいろいろとばたばたしているうちに、だいぶ季節が進んでしまいました。が、春に
観察したこと、そしてそれを通じて思ったことは記録しておくべきだろうと自分なりに思い立
ち、春シリーズを振り返ってみることにしてみました。第一回はウグイです。

ウグイの産卵を観察するにあたって、毎年思い描くのは「瀬一面真っ赤なウグイ」みたい
な素晴らしい光景です。今年は雨後を中心に2日ほど出撃しましたが、このような満点の
光景には出会えませんでした。ま、出会っていたら体調が悪かろうが、仕事が忙しかろう
が、いの一番にこのブログ、ないしはFBで書いていたでしょうが。

そんなこんなで目立った成果はなかったのですが、全くのスカだったわけでもありません。
写真、動画の通り、一応小規模ながら産卵群にも出会えました。ただし、動画を見ていた
だければわかるとおり、この時程度の雨では川底が洗われず、産卵群も産む場所を探し
てうろうろするばかり。
ウグイの産卵群(引き)

画質よくありませんが・・・

この川には砂防ダムがかなりの数入っていて、ちょっとやそっとの雨では、上流から砂利
も来なければその場の砂利も流れていかないようです。本来の川という環境、それを利
用する生物の姿、さらにはそこに挟まる人間活動、これらの関係性は、もっといろいろな
人に考えてもらいたい、というか事情を知った上でどう思うのか聞いてみたい。でも、ちょ
っとしゃべって理解してもらうには内容が複雑で、それなりに聞く体制がある人じゃないと
聞いてもらえない。
このあたりをどうにか克服する革命的な表現手法は無いものだろうか?今後、意識して
取り組んでいくべき課題ですかね。