2012年12月15日土曜日

第三回:サケのメスと反射的におびえる私

~シリーズ:生物の行動と妄想<第三回>~
第三回の今回は、サケのメスが産卵床を造りながら考えていることについて妄想してみたいと思います。

<背景と設定>
サケのメスは産卵を前にして、尾びれで川底の礫を掘ったり集めたりして産卵床を造ります。その間、オスはその後ろで、時折メスの横で体を震わせて産卵を促すような行動をとったりしながらメスの産卵を待っています。
今回は、産卵床造成中のメスと、撮影しようとしている私がコミュニケーションを取れている設定で妄想してみます


メス:「ねぇ、あんた聞こえる?」

私 :「・・・え!?」

メス:「聞こえてるみたいね。あのさぁ、メスって損だと思わない?」

私 :「どうして?」

メス:「だって、産卵床つくるのも、卵産むのも、卵を埋めるのも、産んだ後に保護するのも全部メスよ!」

私 :「そ・・・そうよね。」

メス:「オスなんて後ろでごにょごにょけんかしたりしてるだけじゃない。」

私 :「そ・・・そうかな・・・いや、そうかしら。オスもオスで大変だと思うわよ。」

メス:「そうかしら、オスなんて放精のことしか考えてないじゃない。ほら、今だって私、川底で産卵場所の確認してただけなのに、横で体震わせちゃって。ばかみたい。」

私 :「ば、ばかみたいって!オスにだってそれなりの事情が・・・」

メス:「ずいぶんとオスの肩を持つのね。まぁいいわ、人間の世界ではこの辺の事情はどうなの?」

私 :「・・・・・」


あまり落ちのない妄想で申し訳ありませんが、この会話の序盤の話、産卵を待つまでの間に自分の頭の中で実際に妄想していた内容です。あまりにも待ち時間が長かったので
事実として、鰭をぼろぼろにしながら産卵床を懸命に造るメスの姿は鬼気迫るものがありますし、できあがった産卵床の大きさもよくもまぁこんなものを造ったもんだと感動させられます。そんなこんなで、なおさらメス視点で見ればオスは卵に精子をかけるだけにうつるのかな?とも思えてしまいます。
一方で、オス側とすれば、「今産んでくれないともっと大きなオスがきちゃうかもしれない!」とか、「あんまり周りに他のオスがうろちょろする前に産んでくれぇ~」とか、別のことでだいぶ神経をすり減らしているように思えます。メスは自分の卵は自分の子ですが、オスにしてみれば精子がしっかり卵に届かない限り自分の子は残せないわけで、ここら辺の事情を加味して少し多めに見てもらいたいと思う今日この頃です。

なお、私は自分が男だからなのか、産卵の瞬間を待つという点でオスと目的を共有しているからなのか、撮影の時はどうしてもオスの応援がしたくなってしまいます。

あ、ついでながら人間とサケでは繁殖システムがだいぶ違うんで、そこのところだけ誤解なきようお願いいたします(ま、似たような場合もあるにはあると思いますが)。

2012年12月13日木曜日

M?

先日、こちらのご夫婦に撮影協力を頂き、サケの産卵撮影に挑みました。微動だにせず行動観察し、ご婦人がもうそろそろな雰囲気を出してきて「もう来るか?」というそぶりを見せたとき、他の奥様の邪魔が入る・・・みたいなやりとりがかなりの間続いていました。
そうこうしているうちに寒さと首の筋肉(ファインダーをのぞくために常に頭を上げているため)の疲労が限界に達し、ファインダーから目を切って下を向いてふるえていたら、突如目の前が白く濁りだした。
あわててカメラを向けたら産卵床の中にオスが複数入り乱れている。
どうやら目を離した隙に放卵放精してしまったようだ。
あの瞬間のために待ってたのに・・・・。がっくりして帰りました。




正直、寒いし、首痛いし、翌日の肩こりと頭痛が尋常じゃないし、膀胱が張り裂けそうなほど尿意を催すし、帰りはもう一回行こうなんて考える気にもなれませんでした。
しかし、人間ってやつは不思議なもので、時間がたつとこみ上げる悔しさと、放卵放精を見た後の充実感への渇望から、リベンジしたくてたまらなくなってくるのです。つらいことって忘れるようにできてるのかな?それとも単に自分がアホなだけかしら。