2019年8月21日水曜日

初おちょぼさん


「参道には川魚料理屋がいっぱい並んでますよ。」、「この前もおちょぼさんでモロコを買ってきたんだ。」、「そうそう、フナ味噌とかナマズの蒲焼きなんてのもあったなぁ」等々…
参道の左右には川魚料理屋さんがいっぱい

中部地方出身の知り合い、仕事の関係者、はたまた川魚店の店員さんの口からも常々その噂を耳にしていた。淡水魚に関わるものの聖地ともいえる千代保稲荷神社は、揖斐川と長良川に挟まれた輪中地帯に位置する。日本三大稲荷の一つと言われる立派な神社である。
かねてより、ここにだけは行かねばならぬと思っていたが、たまたま近くで仕事があり、ついに初"おちょぼさん"となった。
川魚料理屋さんの店頭。うな丼よりナマズ定食が高いが、迷うことはなかった。

佃煮などの店頭販売もある。写真を見直して、こいみそなるものを見過ごしたことに気付く。いったい如何なる食べ物だったのか…次は必ず。


参道に着くと、いきなり数件の川魚料理屋の看板が目に入る。仕事終わりの平日、中途半端な時間帯だけに多くのお店は閉まっていたが、看板と店頭メニューだけでも十分な見ごたえがある。なにせ、700mほどの参道に15件以上の川魚料理屋があるのだ。なお、川魚料理屋の他には、串焼き、たい焼きなどの店頭販売の店が並び、食べながら参道を歩くスタイル。一方、川魚料理屋は、中に座敷があるお店が多く、落ち着いて食べたい人はこちらという感じだ。土産物屋などはあまりなく、地元の人向けの生活雑貨の店などが散見され、観光地というよりはこのエリアの商店街的な役割もしていそうな印象を受けた。そもそも千代保稲荷が商売繁盛のご利益があることにも関係しているのかもしれない。
串カツ、ウナギ串などを売っている。

 さて、川魚料理屋さんの店頭のサンプルメニューを見ていくと、ウナギ、アユ、コイといった他の川魚料理屋で一般的に出てくる魚はもちろん、これらに加え、どの店にもナマズの蒲焼きがあることに気づく。ナマズは繁殖が川の増水と密接に関わる種なので、輪中地帯のここでナマズが出るのはある意味必然なのだろう。
それにしても川魚料理屋の数が多い。その密度は間違いなく日本一、ひょっとすると世界一かも知れない。こうまで密集している理由が何かわかるだろうかと、神社内の立て看板や説明文を読み込んだが、川魚と神社の関連を示すものはない。調べてみると(出典)、千代保稲荷の参道に川魚料理が建ち始めたのは大正時代とのこと。どうも、ここの川魚料理屋は複数人できた参拝客が、帰りがてらに会食する場所のようだ。なんとなく、商売繁盛を祈願しに来た仕事仲間がナマズを食べながらワイワイとしている絵が頭に浮かぶ。
ナマズ料理も今でこそ蒲焼きを出すお店がほとんどだが、元は"ず鍋"と呼ばれる鍋だったとか。なるほど、ナマズは大きなものだと60cmを越す。一人で食うには量が多すぎるので、そうした意味でも会食向けの魚といえよう。活かして保存ができ、すぐに調理でき、近所で採れて、皆でわいわいとつつけるタンパク源、こんな条件を満たすのはナマズくらいしかないかもしれない。

しかし、ナマズの"ず鍋"とはいったいいかなるダシが出るものか。大変に興味がある。要チャレンジですな。もっとも現代で蒲焼きに置き換わったのにはそれなりの理由があるのかもしれませんが…

なまず定食 ナマズのかば焼き、鯉こく、コイのあらいがついて2100円関東人としては赤みその酢味噌が新鮮でした。