2019年9月13日金曜日

ラウス側の

川に入るのは初めてだった。
ウトロ側に比べると季節の進行が早いのだろうか、産卵行動が見られたのはサケだけだった。狙いのカラフトはいるにはいるがごくわずか。産卵行動は見られない。

そんなこんなで、撮影はサケに絞る。
手ごろなペアを発見して、さあ撮影、というところで機材に処々のトラブル発生。
以下、個人的メモ。結論、置き撮りに関しては大きくて重い機材が一番いい。

<SeaFrogs E-M1ハウジング+E-M1+M.ZD12-40mm>
・M.ZD12-40mmが使えるが、使える画角は20-40mm(35mm換算40-80mm)で広角側がケラレる。
・防水性能はよろしい。
・大きさの割に軽い。泳いでも置き撮りでもウェイトは必要(置き撮りの場合かなり必要)。
・置き撮りの場合、下面が狭く不安定。ウェイトの付け方重要。
・ストロボは使える。
・当たり前だがスイッチ類は使える。
・LUMICA Wireless Lineの取り付けが難しい。

<PT-E01+E-M1+M.ZD12-40mm>
・M.ZD12-40mmにケラレはない。
・もとはE-300用だが案外ぴったり。少し詰め物があったほうが浮力は抑えられる。
・中に詰めるものが多いと蓋が浮くので要注意。
・重くて安定しているので置き撮り時のウェイトはそれほどいらない。
・ストロボは使えない。
・当たり前だがスイッチ類は使えない。
・ストロボの電子接点使えばLUMICA Wireless Lineが水中でも行けるかも。
・Wi-Fiはふたを閉める前に接続しておく必要アリ。
LUMICA Wireless Lineの取り付けがしやすい。
・だいたい一時間半は連続撮影可能。
 
<PT-E050+GF7+LUMIX12-32mm>
・ケラレなし。
・もとはXZ-1用だが案外ぴったり。ただし、ハウジング内部のボタン類は全て限界までカットしないとボタンにあたる。
・Wi-Fiボタンはあらかじめ押しておく必要アリ。
・ストロボは使えない。
・当たり前だがスイッチ類は使えない。
・Wi-Fiボタンはふたを閉める前に押しておく必要アリ。
・小さいのでケーブル用に一部を水上に出すことは困難。

<LUMICA Wireless Line>
・水中に先端を沈めるとダメ。
Wireless Lineの名前が矛盾している。

<GoPro>
・深いところは角度に要注意。あおり気味にすると河床が写らず、太陽光で変なチンダル現象が入ってしまう。

肝心のサケは、いい感じに産卵床が出来ていたのだが、ペアのオスが縦帯があってなんだかメスみたいだった。顔は鼻曲がりでまごうことなきオスの顔なのだが、メスのように産卵床を掘るような振る舞いをする。
他のオスに排他行動をとるのだが、攻撃されたオスはなにやら反撃してよいのか悪いのかという動きをする。メスもまた、これとペアでいいのかどうか迷っている感じで一向に産卵が進まない。
結果、放卵放精は見れず。
撮影機材の画角が35mm換算40mmしか使えなかったので、妙にドアップのサケを映して終了。ただ、これはこれでよいのでは?とは思っている。
それにしても、羅臼の川はオショロコマ多いですな。サケペアの後ろに大量のオショロコマが背景として入っているのがここらの川の特徴なのかもしれない。
オス同士の闘争 最初、メスの前で争っていた2尾だが、いつの間にかメスそっちのけで争い始め、決着がついたころにはメスがいなくなっていた。産卵行動を観察していると、オスってバカだなぁと思う瞬間がしばしばある。
サケのペア 大体がアップでしか撮れなかったのだが、これはこれで悪くないか。
オスの排他行動 ちなみに噛みついているのがオカマっぽいオス
オスの排他行動を上から見たところ。
メスの産卵床造成

ペアの後ろには卵食いオショロコマが大量につく。たまにペアに追い払われている。

撮影後移動がてら、半島付け根部分のサクラマス観察スポットを教えてもらった。
ここもサクラマスが産卵行動中。
話によると、例年今時期が終盤とのこと。
サクラマス産卵行動中
帰りはウトロでラーメンを食べてラウスへ戻った。
知床峠で中秋の名月を拝む。
長時間露光だと月が太陽みたいになってしまう。
月も風景も肉眼で見たままで撮りたい時、どうやってとったらよいのだろう?
超高感度で短時間露光にすべきなのか??

ついでに羅臼岳も拝む。
羅臼岳 25年前登った。今や登る気になれない。

気温は13度ほど。思ったよりは寒くはないのだが、なんだろうか、北海道の冬が迫りくるこの雰囲気は、どうにも懐かしくも切ない感じが込み上げてくる。

おしまい。

2019年9月12日木曜日

朝から

川へ。
狙いはサクラ。
現場に着くと、産卵床造成中のメスを発見した
昨日の雨がトリガーになっていた模様だ。
今日も小雨が降る曇り模様で、水上からの撮影だと光量が十分に取れない。とはいえ、見たところ産卵床の堀始めのようで、ここで散らすと帰ってこない可能性が高く、水中撮影も無理そうだ。
しかたがないので、感度をあげての水上撮影に取り組むことにした。
ISO1600でもSSが1/60程度なので、今ひとつ画がぱちっとこないのだが、まぁ、ペアが抑えられたので良しとする。放卵放精は夕方か明日かなぁ。
サクラマスは産卵行動中に水上に出てうっすら水をかぶっている時の色味が美しい。
残念ながらつかまえてもこの感じは見られない。産卵行動をしている最中にしか見られないこの色味は、日本に生息するサケ科魚類の中で一番きれいだと思う。
放卵放精まで見たい気持ちはあるが、まるまる一日をここで潰しても見られる保証もないので、午後には移動する。
確認したペア

産卵床造成中のメス
 移動がてらサクラマスのルイベ漬け丼なるものを食う。ついさっきまで、美しいとか思っていたにもかかわらず…。
食べてみると、やはり美味い。やはりサケと比べると、サーモン感がほんのりとして上品だ。
味も含めて美しい。ということにしよう。
サクラマスのルイベ漬け丼
食い終わったら半島方面へ移動。
狙いはカラフト。10年前の朝に出撃した場所だ。
10年前の駐車場所がそのままあるか不安であったが、変わらずそのままだった。
産卵場も大きな変化はなかった。
しかし、上から見た感じでは既に産卵済み。適地に所せましとつくられた産卵床それぞれにガードメスがついている状態。
数尾のオスがふらふらとメスに近寄っていくが、「私、もうそういう気分にはなれないの!」とばかりに、どれもメスに追われていく。うーむ。カラフトは8月後半に来ないとだめだなぁ。
ここでは水中撮影を敢行。雨のせいか透明度が今一つだが、ボロボロのガードメスとメス同士の排他行動をひとしきり映して終了。
 
産卵床にガードメスがついている状態。一尾だけオスがふらふらしている。
産卵床ガード中のメス かなりボロボロになっている。
メス同士の排他行動。ガードメスが何かの拍子に他のメスの産卵床に近づくとこうなる。産卵後期の個体の尾がボロボロなのは、産卵床を掘ることもそうだが、他個体から噛みつかれているのも結構な要因なのかもしれない。
 続いて、知床ビジターセンターへ。
ここからが今日のメインイベント、Hucho氏との再会。
前に会ったのが吉川でナマズを食べた時だから…2年前くらいだろうか。
今回彼から聞いた話は、私が持って行った埼玉土産十万石饅頭”では明らかに不釣り合いな話だった。
イトウに惚れて北海道へ来てから20年以上、地道に川を歩き、データをとり、人と接してきた彼の活動は、ここへきて地方行政を動かし、保全と活用の両立という形で昇華しようとしているとのこと。
頂いたパンフレット これまたデザインと写真が秀逸である。
 イトウという見る人が見れば憧れそのもののような魚を、これまで存在すら意識しなかった地域の人(あるいは逆に無秩序に利用している人)に魅力を伝えて誇りとしてもらう。その上で、自身でフィールドを歩き産卵河川の把握、現存個体数の把握を行い、科学的根拠のあるワイズユースを目指す。彼が語るその過程は、一つの伝記を読んでいるようであった。
生物屋が一般の人に野生生物の地域資源としての魅力を伝え、人を巻き込み、現場経験をもとに考えてきた保全と利用の最適な形へすり合わせていく。日頃、行政側で決めた事業を円滑にまわすためのデータ取りに専念せざるを得ない身としては、着想~実際の運営まで技術者主導で行うなど、こんなに痛快な話はない。
これまで蓄積してきた知識と経験から導き出した答えを、実社会で実現すること。これこそ自分も目指すべき方向だ。本当にいい話を聞きましたよ。
実に価値ある一日だった。

おしまい。

2019年9月11日水曜日

ちょっと遅い夏休みとして、

10年ぶりに知床へ。
10年前はたしか家族と一緒だった。
朝、家族が目覚める前に川へ撮影に出撃し、薄暮の中クマにおびえながら川に潜ったのが懐かしい。

今回は女満別空港からのスタート。ここに至っては25年ぶりだ。当時はまだ世界遺産登録すらされていなかった。月日が経って少しは洗練されたかと思いきや、この空港に関しては当時からあまり変わらない気がする。知床来るときはみな札幌から来るのかな。
空港から斜里に向かう。空港とは一転、斜里駅はなんだかとってもおしゃれになっているではないか。宿泊した駅横のルートインは外人ばっかり。
私の中では最果ての漁師町のイメージだったが、すっかりアウトドアとかトレッキングとかの横文字が似合う街になっている。
斜里駅 かつてのさびれたローカル線駅の面影は無し。

駅前のオジロワシのオブジェ リアルに作りこまれていてかっこいい。
さて、今回は知床エリアの魚も目的ではあったが、一番の目的は人に会う事だ。
北海道の河川調査関係の知り合いはそんなに多くはないのだが、そのうちの会いたい二人が偶然にもこのエリアにいるとのこと。個人的に思い入れのある土地なのだが、やはりここには何かを引き寄せる力がある。
本日はそのうちの一人と食事。彼には大学生のころ、仕事を手伝ってもらっていた。試験前のK氏を人身御供にウケクチを探しに行ったのが懐かしい。今では形の上では大学の後輩ということになる。

5年ぶりに会う彼は、様々な経験をしてだいぶ大人になっていた。20代の5年間は大きい。
私は学術の世界からは遠く離れてしまっているが、そこに挑んでいる彼の話は刺激的で面白い。場所は変わっても自然を探求する好奇心と、人をあっと言わせる発想と行動力さえあれば、十分に輝ける。彼には十分にその資質があるので、今後大いに期待したい。もちろん仕事場での活躍も含めてね。
Homo sapiensとしても、20代~30代という魚でいうところの婚姻色が乗り始めたいい時期の感じがしてきた。こちらはこちらで密かに楽しみだったりする。

ちなみに夕食は道の駅斜里の横の”しれとこキッチン熊湖”でサクラマス定食、カラフトマスの燻製、熊肉の大和煮を頂いた。サクラマス定食は一夜干しされたサクラマス丸ごと一尾が焼き魚になっている。当たり前だが、おいしい。
サクラマス定食 1400円也。リーズナブル。
カラフトマスの燻製
クマの大和煮
サケと同じいわゆるサーモンの味だが、脂がのっているのと味わいが上品だ。焼き方もあるのだろうが、サケよりも骨が柔らかく、中骨以外は食べても全く問題ない。
また、カラフトマスの燻製は普通にうまいスモークサーモンだ。量的にはサクラマスよりも採れると思うのだが、定食にせずスモークのみを出すのはやはり味的な理由なのだろうか。この際多少味が落ちようが、クセがあろうが焼き魚定食で出してほしい。そして食べ比べをしてみたい。
これらを食して思うに、普段食べているサケってかなり味の主張の強い魚なのではないかと思う。

おしまい。