2019年9月12日木曜日

朝から

川へ。
狙いはサクラ。
現場に着くと、産卵床造成中のメスを発見した
昨日の雨がトリガーになっていた模様だ。
今日も小雨が降る曇り模様で、水上からの撮影だと光量が十分に取れない。とはいえ、見たところ産卵床の堀始めのようで、ここで散らすと帰ってこない可能性が高く、水中撮影も無理そうだ。
しかたがないので、感度をあげての水上撮影に取り組むことにした。
ISO1600でもSSが1/60程度なので、今ひとつ画がぱちっとこないのだが、まぁ、ペアが抑えられたので良しとする。放卵放精は夕方か明日かなぁ。
サクラマスは産卵行動中に水上に出てうっすら水をかぶっている時の色味が美しい。
残念ながらつかまえてもこの感じは見られない。産卵行動をしている最中にしか見られないこの色味は、日本に生息するサケ科魚類の中で一番きれいだと思う。
放卵放精まで見たい気持ちはあるが、まるまる一日をここで潰しても見られる保証もないので、午後には移動する。
確認したペア

産卵床造成中のメス
 移動がてらサクラマスのルイベ漬け丼なるものを食う。ついさっきまで、美しいとか思っていたにもかかわらず…。
食べてみると、やはり美味い。やはりサケと比べると、サーモン感がほんのりとして上品だ。
味も含めて美しい。ということにしよう。
サクラマスのルイベ漬け丼
食い終わったら半島方面へ移動。
狙いはカラフト。10年前の朝に出撃した場所だ。
10年前の駐車場所がそのままあるか不安であったが、変わらずそのままだった。
産卵場も大きな変化はなかった。
しかし、上から見た感じでは既に産卵済み。適地に所せましとつくられた産卵床それぞれにガードメスがついている状態。
数尾のオスがふらふらとメスに近寄っていくが、「私、もうそういう気分にはなれないの!」とばかりに、どれもメスに追われていく。うーむ。カラフトは8月後半に来ないとだめだなぁ。
ここでは水中撮影を敢行。雨のせいか透明度が今一つだが、ボロボロのガードメスとメス同士の排他行動をひとしきり映して終了。
 
産卵床にガードメスがついている状態。一尾だけオスがふらふらしている。
産卵床ガード中のメス かなりボロボロになっている。
メス同士の排他行動。ガードメスが何かの拍子に他のメスの産卵床に近づくとこうなる。産卵後期の個体の尾がボロボロなのは、産卵床を掘ることもそうだが、他個体から噛みつかれているのも結構な要因なのかもしれない。
 続いて、知床ビジターセンターへ。
ここからが今日のメインイベント、Hucho氏との再会。
前に会ったのが吉川でナマズを食べた時だから…2年前くらいだろうか。
今回彼から聞いた話は、私が持って行った埼玉土産十万石饅頭”では明らかに不釣り合いな話だった。
イトウに惚れて北海道へ来てから20年以上、地道に川を歩き、データをとり、人と接してきた彼の活動は、ここへきて地方行政を動かし、保全と活用の両立という形で昇華しようとしているとのこと。
頂いたパンフレット これまたデザインと写真が秀逸である。
 イトウという見る人が見れば憧れそのもののような魚を、これまで存在すら意識しなかった地域の人(あるいは逆に無秩序に利用している人)に魅力を伝えて誇りとしてもらう。その上で、自身でフィールドを歩き産卵河川の把握、現存個体数の把握を行い、科学的根拠のあるワイズユースを目指す。彼が語るその過程は、一つの伝記を読んでいるようであった。
生物屋が一般の人に野生生物の地域資源としての魅力を伝え、人を巻き込み、現場経験をもとに考えてきた保全と利用の最適な形へすり合わせていく。日頃、行政側で決めた事業を円滑にまわすためのデータ取りに専念せざるを得ない身としては、着想~実際の運営まで技術者主導で行うなど、こんなに痛快な話はない。
これまで蓄積してきた知識と経験から導き出した答えを、実社会で実現すること。これこそ自分も目指すべき方向だ。本当にいい話を聞きましたよ。
実に価値ある一日だった。

おしまい。

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