2015年1月13日火曜日

科学記事雑感:寄生関係の逆転(ヨーロッパタナゴRhodeus amursとドブガイ属の二枚貝Anodonta sp.)

私のお小遣いが今の額に決定されるまで、かみさんとの間には語るも涙なやりとりがありました。同じように、生物同士の今の間柄というものも、進化の過程でずいぶんな攻防があったのでしょう、今回はそんなことを感じさせるお互いを利用しあう2種類の生き物のお話です。

このブログでもしばしば登場している魚、タナゴ類は5~10cm程度の小さな淡水魚。世界的にみると、東アジアを中心に50種類くらいが生息しているそうです。日本にも、このうちの20種弱と、かなり多くの種類が生息しています。
さて、このタナゴという魚、卵を二枚貝の中に産みつけるという変わった生態を持ちます。この生態、貝にしてみれば迷惑な行為のようで、卵を産みこまれると何とか吐き出そうとするようです。しかし、そこはタナゴ類のほうが一枚上手。卵の構造が貝の中から吐き出されにくい形になっており、吐き出されるのを防いでいます。

一方、二枚貝も寄生されているばかりではありません。こちらはこちらで、雌の貝が幼生を放出して魚に寄生をさせるという生態を持ちます。さて、貝にしてみれば、タナゴ類は産卵するためにわざわざ近づいてくるわけですから、幼生を寄生させるのには好都合な相手に見えます。ところが、ここもタナゴが一枚上手。タナゴはどうやら二枚貝の幼生に対して免疫機構のようなものを持つようで、タナゴについた幼生は正常に発育せず、稚貝になる前に消えてしまうようなのです。つまり、現状、タナゴ類と二枚貝の関係はタナゴ類の圧勝という状態にあるといえるかと思います。

ところが、この関係、すべてのタナゴと貝について成り立つわけではないようです。近年の研究によると、タナゴ類の一種、ヨーロッパタナゴ(Rhodeus amurs)は、同じ生息地にもともと住んでいる在来種の貝(ドブガイ属の一種Anodonta anatina)との間ではこの関係が成り立ちますが、東アジアから持ち込まれた外来種(同じくドブガイ属の一種Anodonta woodiana)との間ではタナゴ側は貝を産卵場として利用せず(できない?)、一方で貝の幼生はタナゴに寄生して発育がすすむ、つまり寄生関係が逆転するのだそうです[1]。

ヨーロッパタナゴ(Rhodeus amurs)の産卵行動
貝はAnodonta cygneaというドブガイ属の貝のようです。ここでは産卵に失敗して貝から卵が吐き出されます。
紹介した論文ではAnodonta woodianaを産卵場として選ばないという結果でしたが、産卵はするが全て吐き出されると言う報告もあるようです。

なお、Anodonta woodianaは本種の幼生が寄生した魚が移植されたことにより、ヨーロッパに侵入したと考えられていますが、天然分布地の東アジアでは多くのタナゴ類に産卵場として利用されています。対するヨーロッパタナゴ、こちらは世界的なタナゴの分布域からすると端っこに分布する種で、ヨーロッパに分布するタナゴ類は本種一種。こうした背景を考えると、Anodonta woodianaのほうがタナゴ-二枚貝間の種間関係に”揉まれて”いたからなのか?とも思えますが、いずれにせよ歴史的に接点のなかった二種の間では通常と違う種間関係となる場合があるのでしょう。外来種の存在が、皮肉にも在来種同士の種間関係が長い歴史をかけて築かれたものであるということを示した事例であるとも言えるかも知れません。

<Reference>
[1] Reichard, M., Vrtílek, M., Douda, K., & Smith, C. (2012). An invasive species reverses the roles in a host–parasite relationship between bitterling fish and unionid mussels. Biology letters, 8(4), 601-604.


蛇足:こんな事例を見てしまうと、ヨーロッパやロシア、北米を分布の中心とするカワシンジュガイ類と、東アジアを分布の中心とするタナゴという組み合わせも、お互いの分布域の端っこである日本で出会うわけで、何か特殊な関係がありそうに妄想してしまいます・・・

2015年1月9日金曜日

科学記事雑感:卵で卵をガードする(マメゾウムシの仲間:Mimosestes amicus)

人間、なにがしか行動するからには、行動に対して最大の効果を得たいものです。常に自分の身の周りの状況を正確に把握して、その中で最大の効果を得る、なんてことは誰しも思うけれどなかなかにできないものです。
今回読んだ論文は、そんな理想を現実として実践しているのでは?と思える昆虫のお話でした。

アメリカに生息するマメゾウムシの一種、Mimosestes amicusは、アカシアの木になるマメの”さや”の外側に卵を産み付ける習性があるのですが、この昆虫にはUscana semifumipennisという卵寄生蜂の天敵がいるそうです。卵寄生蜂というのは、他種の卵に自分の卵を産み付けて寄生する蜂で、産み付けられればその卵は蜂の子供の栄養になってしまいます。
さて、このMimosestes amicus、寄生蜂に無抵抗で寄生されているのかといえば、どうもそうでもないようです。なんと、卵を産むと、その上にかぶせるようにもうひとつ別の平たい卵を産んで寄生蜂から卵をガードするのだというではありませんか。
しかし驚くのはまだ早い。
最近の研究[1]によれば、実験的に寄生蜂のいない環境に置いた場合、このような平たい卵を重ねて生むようなことはほとんどせず、普通の卵ばかりを産むのだというのです。平たい卵は普通の卵と比較して半分程度の重量しかなく、正常に発育することはできません。しかし、コストとしては普通の卵と同じ受精卵1個分のコストがかかっています。たとえば本来20個の卵を持っていたとしたら、すべて平たい卵を重ねて産んでしまうと、すべて正常に発育しても10匹の幼虫しか育ちません。1個を無駄にしてしまう形になるのです。
つまり、この昆虫は寄生蜂の存在を感知して、最大限の子孫を残す最適な方法を採用して産卵しているのだと考えられます。

寄生蜂の存在を感知する能力もすごいし、それにも増して卵の形を意のままに変えてガードするって・・・昆虫ってやつは簡単に想像を超えてきますな。

<Reference>
[1] Deas, J. B., & Hunter, M. S. (2012). Mothers modify eggs into shields to protect offspring from parasitism. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 279(1730), 847-853.

http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/279/1730/847.short

2015年1月7日水曜日

科学記事雑感:妊娠は欲求を変える?(ヤマカガシ:Rhabdophis tigrinus)

夫婦の間に子供ができたとき、おなかの中で直接子供と接している妻は子供に栄養を与えることができますが、旦那側はといえばほとんど何もできません。
貢献できているとするならば、せいぜいが苛立つ妻のサンドバッグになり、精神安定に寄与するくらいでありましょうか。
 さて、我が家のかみさんによると、妊娠した女性は味覚が変わったり、食に対する欲求が変わったりするのだそうですが、この現象は人間だけではなく他の動物でもおこるようです。

ヤマカガシ(Rhabdophis tigrinus)というヘビは、通常は水田や草地、河原などに生息し、そこに生息するカエルを食べて生息しています。ところが、最近発表された論文によると[1]、妊娠(といっても産むのは子供ではなく卵ですが)したヤマカガシのメスは、盛んに山地に出かけるようになり、普段の生息場にはあまりいないヒキガエルを選択的に食べるようになるというのです。さらにこの論文では、妊娠時のメスは、妊娠していないメスおよびオスと比較して明らかにヒキガエルのにおいを好むようになるという実験結果が示されています。



それでは、なぜこのような変化が起きるのでしょうか?
ヤマカガシは毒ヘビなのですが、自分で毒を造りだすことができません。彼らが持つ毒は、ヒキガエルのもつ毒から摂取したものなのだそうです。それでは、卵から出たばかりの子供のヘビはどうかというと、ちゃんと毒をもっているようです。ただし、これは親が妊娠中にヒキガエルを食べていた場合に限った話です。親がヒキガエルを食べていない場合は、毒を持たない子供が生まれるとのことが知られています。毒のない子供も、毒を与えればすぐにストックができるようなのですが、生まれたばかりの子供ではヒキガエルを食べることはできません。
つまり、妊娠中のヤマカガシによるヒキガエルの積極的な摂取は、自力でヒキガエルの毒を摂取できるようになるまでの武器として、子供に毒を与えるための行動ではないかといわれています。

人間はともかく、ヤマカガシのメスには管理栄養士がいるわけでもなく、教えてくれる何かがあるわけでもないでしょう。きっと、そうしなければならない強い欲求が生じるのだと思われます。
振り返って人間の場合、欲求に対して素直に動きすぎると過剰に太ってしまったり、ひいては妊娠中毒症のようにあまりいい結果に結びつかないようです。これは、ヤマカガシと違ってわれわれの周辺の環境が、欲求が満たされやすい状況にあるためでしょう。ヤマカガシの場合は、欲求にしたがって行動、探索してこれを満たす。一方の我々は、過剰な達成を避けるために欲求をセーブする。
うーむ、生物としての達成感はヤマカガシのほうが高そうだけど・・・まぁ、欲求が満たせないときのイライラ感は一緒なのでしょうかね。

<Reference>
[1] Kojima, Y., & Mori, A. (2015). Active foraging for toxic prey during gestation in a snake with maternal provisioning of sequestered chemical defences. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 282(1798), 20142137.

http://classic.rspb.royalsocietypublishing.org/content/282/1798/20142137.short

科学記事雑感:使用法の進化(デンキウナギ:Electrophorus electricus)

魚を調査する道具に、電気ショッカーという漁具があります。
文字通り水中に電流を流す道具で、感電して動けなくなった魚を片っ端から捕獲できる極めて効率の良い漁具です。

しかし、この道具にしてもけっして万能なわけではありません。
たとえば、大きな川や湖など、広い水面で使用すると魚は当然電気の届かない範囲に逃げてしまいます。また、水中を泳ぎまわる魚は、感電するとおなかを上にして水中を漂うのでわかりやすいのですが、石の下や泥の中に潜んでいる魚はそううまくはいきません。
こうした魚は、もともとが水に浮きにくい体の構造をしており、感電しても見つけにくい場所で動かなくなってしまいます。場合によっては、石の間をコロコロと転がりながら流れて行ってしまったりもしてしまいます。要するに、魚を感電させることができるこの強力な道具にしても、うまく使わなければ逆に非効率になってしまうこともあるのであります。

さて、アマゾン川に生息する有名なデンキウナギ(Electrophorus electricus)も、電気ショッカーと同じように小魚を感電させて捕えます。
この魚の発する電気は600Vもの電圧、場合によっては馬を感電死させるほどのものですです。
しかし、高電圧は極めて短時間しか持続しません。そのため、餌をとる時には小魚に接近し、この高電圧を1秒間の間に400回ほどの頻度で連続して発します。これにより、小魚を感電させ、身動きができない状態にしてから捕食するわけです。




そんなデンキウナギでありますが、最近、発する電気は単に小魚を動けなくするというだけではなく、捕食に際してより効果的に使われていることが明らかになりました。
昨年発表された論文によると[1]、このウナギ、小魚の動きを止める連続の高電圧を発する前に、2~3回程度の小数回の電気を発するそうです。この電気は、小魚の筋肉につながる神経に働きかけて"けいれん"を起こし、さらには、このけいれんが起こす水中の振動を、小魚の居場所を知る情報として使っているというのです。
なお、論文内に紹介されている実験によると、小魚が見える場所にいてもけいれんが起きない場合はアタックせず、逆に電気と無関係にけいれんによる振動を起こした場合は小魚へアタックするとのことでした。

考えてみれば、普通の川であれば水草や石をはじめ、水中にはいろいろなものがあって、いつでも他の魚が見える状態にあるわけではありません。加えて、アマゾン川であれば水も濁っていて、視界も悪そうです。相手の居場所が視覚でわからないのであれば、”遠隔操作で相手を動かして場所をつかむ”というのはきわめて合理的な方法なんでしょうね。強い力を持っている生き物に対しては、どうしても力の強大さに目が行きがちですが、力の使い方も相応に進化しているものだといえそうです。

Reference
[1] Catania, K. (2014). The shocking predatory strike of the electric eel. Science, 346(6214), 1231-1234.
http://www.sciencemag.org/content/346/6214/1231.short

2014年11月18日火曜日

昨日に続き

昨日に続き、今度はIRを通勤中に読んでみる。
こちらは英文だし、知らない魚のことが多いので、イトヨのところだけ。
どうやらイトヨ日本海型に標準和名がついたようだ。
その名もニホンイトヨ。
14年前に撮影。照明がうつってたり、影が入ってたり微妙にぶれてたりで、あんまり美しくない写真ですが…
仕事的にこれはちょっと助かります。
これまで、東北や関東北部の河川下流域で降海型と思われるイトヨが確認されたとき、リストをもとにいつもめんどくさいやり取りがありました。
このエリアは太平洋に面しているのだけれど、生息している降海型イトヨはイトヨ日本海型。これがどうも具合が悪く、太平洋側の川でなぜに日本海型がリストに出るのかと指摘を受けることが度々ありました。
そのたびに、「イトヨには日本海型と太平洋型があります。そして、日本海型は降海型、太平洋型は降海型と陸封型の生活タイプがあります。今回は太平洋側の河川で確認された降海型の個体ですが、太平洋型の降海型は日本では北海道の東部だけで知られています。一方で、日本海型は名前では日本海型となっていますが、利根川以北の本州太平洋側にも分布しているとされています。そのため、この河川で日本海型のイトヨが確認されることには問題はありません。」という長々しい説明をせねばならなかったのでありました。

今回の和名はこうした違和感をなくすという意味ではとても助かるなぁ~。と思った次第でありました。

2014年11月17日月曜日

今号は興味深く

昨日から腹を下し気味。
今日も腹がずっとゴロゴロいっている。
それにしても屁って不思議だなぁ。
気体は液体よりも軽いはずなのに何で尻から出るんだろうか?
げっぷならすんなりわかるんだけど。
腸の中に気体逆流防止弁でもついているんだろうか?

それはともかく、昨日最新の魚類学雑誌が届き、通勤中に電車の中で読んでみた。
今号はアユモはもちろん、カワムツ、アブラボテ、シマヒレヨシ、サケなど顔なじみのネタが多く、さらには個体の撮影法や魚類検索第三版の書評があって最初から最後まで興味深い内容が詰まっていました。
特に興味があったのがアブラボテの論文。
愛媛の個体群はどうやら九州からの移入個体群のようなのだが、在来のヤリタナゴとの交雑が進んでいる場所が見られたり、ところにより置き換わっているそうな。
ヤリタナゴとアブラボテの両者が自然分布するところの中には、すみ分けている場所もあるようだけれど、明らかに同所的にいる場所もある。
同所的にいる場合、繁殖期の成魚の群れは、一応ヤリタナゴとアブラボテで分かれているように見えるし、交雑個体(ヤリボテ)を見る確率もそれほど高くない気がする。つまり、それなりに種間の認識は働いているように見えるので、単純に両者を一緒にしてもそう簡単に交雑するとも思えない。認識力が低下する条件がなにがしかあるだろうのか?ううむ。興味深い。

全然関係ないけど、レッドデータブック2014、貝類が一番分厚いのね。
意外。

2014年11月16日日曜日

アユの

食べ比べをしてみた。
やはり川ごとに全く違う。
全く別の日にたべてもなんとなく違うのはわかるのだろうが、同じ時に食べると違いに確信が持てる。四万十産と比べると愛知産は香りが少なく癖がない。好みは分かれそうだが、四万十産のほうがアユらしさがはっきりする感じだった。

さて、週末は久々に家で過ごしました。子供の習い事を見たり、自転車の練習補助をしたりと、普通の父さんの仕事をしながら、iPhoneのデータ整理やらOSを8.1にアップグレードしたり、先日の出張中に子供のおもちゃになったらしい前機種IS04のデータやアプリの削除等々、ちまちました作業をしておりました。iPhoneのほうはOSアップ後の変化はヘルスケアだのpodcastだのデフォルトのアプリがなんだか増えたな…という印象。逆にそれ以外の違いがよくわかりません。この辺は使いながらぼちぼちわかることでしょう。
IS04のほうは、まぁかつてよくこんなの使ってたなぁ〜というほど動きが悪い。スタート時のロック解除のスライドすらぎこちなく、十回ほどトライしてようやく通常画面になる始末。
しかし、アプリを軒並みアンインストールしたら、かなり動きがよくなった。使い勝手の違いは、アンドロイドとiOSの差というよりは、単純にマシンスペックの差だったのね。そもそも、アプリをあんまり入れちゃダメな機種だったのかも。スマホとしてどうなのかとは思うけど…
今時のスマホなら、iPhoneと勝負になるのかな?まぁ、iPhoneに不満もないので試す気も今のところないですけれど。