Lindström, Kai, and Christophe Pampoulie. "Effects of resource holding potential and resource value on tenure at nest sites in sand gobies." Behavioral Ecology 16.1 (2005): 70-74.
概要
昨年、ヨシノボリを水中で観察する機会が多く、オス同士の闘争の意味について探っていたら行き当たりました。
巣を防衛する能力と巣の質の関係を、Sand Goby(Pomatoschistus minutus)という浅海域に住み、石などの硬い基質に巣をつくり産卵するハゼの仲間を用いて検証した論文。
実験は実際の産卵水域に80cm×80cmの隔離水界をネットで作り、その中に基質とオスを入れ、巣ができたらネットをはずして他のオスがそこにアクセスできるようにするというもの。実験は、基質が小さい場合と大きい場合、オスが小さい場合と大きい場合のそれぞれ(計4パターン)で行われた。その上で、それぞれの場合の巣の防衛時間とのっとられた場合はのっとりオスの個体情報を計測した。
実験の結果、小さなオスは大きな巣の場合も、小さな巣の場合も長くは防衛できず、大きなオスにのっとられてしまう。一方、大きなオスは、大きな巣で長く防衛するという結果が得られた。
~以下、雑感~
1)野外に小さなエンクロージャ(隔離水界)をつくる方法は、いろいろな応用がききそう。来るジュズカケハゼの産卵期に、事前にオスだけ捕まえておいてちょっと試してみるのもよいかなと思った。
2)巣の大きさと個体サイズは結構シビアな関係があるのだなと感じた。この論文の場合、実験に使ったオスの1割しか卵の孵化できる期間、巣を保持できなかったようだし、平均の巣防衛時間が24時間と言うのもいささか短すぎる。要するにそれ以外の場合は、他のもっと適したオスにのっとられてしまったと言うことだ。
また、小さな巣をのっとったオスと、大きな巣をのっとったオスの大きさが微妙なサイズ差であることや、大きな巣材を与えられたオスでも巣を手放すケースもあったことなどからも、このハゼは体のサイズに合わせて結構厳密に巣を選んでいるように感じる。
この論文を読むきっかけになったのはヨシノボリの観察だが、彼らの場合もある一定のエリアで威張っていたオスが通りがかりの大きなオスにあっさり居場所を奪われてしまうような場面があり、結構巣の保持にシビアなやり取りがあるのかもしれないと思った。
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