2015年4月16日木曜日

へぎ蕎麦

 


ここ5年ほど毎年新潟県十日町市の仕事があったのだが、朝は早く、夜は遅い仕事だったので、町に着くころはいつも真っ暗。名物らしい名物は味わったことがなかった。
と、いうか、何が名物なのかも意識していなかったのだが、この間の現場で同行させていただいた方より、「へぎ蕎麦」なるものが名物だと教わり、さらには小嶋屋なる有名なお店(越後湯沢駅中支店)でご馳走になってしまった。

このへぎ蕎麦、最大の特徴はつなぎに「ふのり」が入っていること。
おそらくこのおかげで麺のコシは蕎麦の中でもかなり強いものになっている。
また、味もほんのりとノリの風味がして美味い。なんといっても、蕎麦つゆとの相性は抜群だ。
カテゴリとしては通常の蕎麦とは別に考えるべき食べ物かもしれない。
本当に美味しゅうございました。
ごちそうさまでした。

さて、「ふのり」は文字通り海苔なので、海のものだ。
しかし、肝心の十日町市は内陸部にあるので海に面してはいない。
十日町市周辺では、隣接する小千谷市の小地谷縮に代表されるように織物業が盛んらしい。
調べてみると、「ふのり」とは漢字で書くと「布海苔」、つまり、織物の仕上げの糊付けにつかう海苔であり、一説によると蕎麦に誤ってこれを入れたのがへぎ蕎麦の始まりだとか。
これが本当かどうかは別にしても、ふのりが使われていることと織物文化との関係があるのは間違いないだろう。
なんというか、特産品が産んだ特産品という感じで、少々たとえは悪いが寄生蜂への寄生蜂・・・みたいな生物の進化に通じる面白味があるように思う。

ちなみに、へぎ蕎麦の「へぎ」は漢字で書くと「片木」で、蕎麦が入っている入れ物のことのようだ。杉などの板を薄くそいで、四方に縁を付けた角盆のことを指すらしい。
蕎麦自体の味の特徴は明らかに「ふのり」にあるのだが、蕎麦の名前には味に直接関係しない入れ物の名前がついているのもなんだかおもしろい。

まぁ、それ以前に、私的には「衣類に使う糊(布海苔)が食べられる」、という基本的な事にも驚いていたりするわけなんですがね。

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